デザイン思考とカスタマーサクセスの類似性。日本企業の変遷に見る「顧客中心」の本質
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日本国内のビジネスシーンを振り返ると、2010年前後から「デザイン思考(Design Thinking)」という言葉が叫ばれるようになりました。イノベーションを生み出すための思考法として、今現在でも多くの企業が研修やワークショップに取り入れています。
そして近年、サブスクリプション型ビジネスやSaaSの台頭とともに、「カスタマーサクセス(Customer Success)」という言葉が急速に注目を集めています。
一見すると、これらは異なる時期に流行した別々のバズワードのように思えるかもしれません。「デザイン思考」はクリエイティブな課題解決のメソッドであり、「カスタマーサクセス」は顧客を成功に導くための組織的な役割やマインドセットだからです。
しかし、この二つを深く掘り下げていくと、現代のビジネスが生き残るために不可欠な「ある共通の本質」が見えてきます。
今回は、この二つの概念の類似性を紐解きながら、今、企業に求められている姿勢について考察します。

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「作る論理」から「共感する論理」への転換
かつて「デザイン思考」が日本で注目された背景には、技術力起点で作られた「多機能だが使いにくい製品」への反省がありました。作り手の論理ではなく、「ユーザーが何に困り、何を求めているのか」という共感(Empathy)からスタートする。これがデザイン思考の第一歩です。
一方、近年注目される「カスタマーサクセス」も全く同じ起点を持っています。「商品を売れば終わり」ではなく、「その商品を使って顧客がどんな成果(サクセス)を出したいのか」という顧客のゴールを定義することから始まります。
つまり、どちらのアプローチも、「企業(売り手)の論理」ではなく、「顧客(買い手)の心理と文脈」に合わせて価値を届けるという点で完全に一致しています。これは、私たちがお伝えしている「ブランドとは企業側が作るものではなく、消費者の心の中に存在するものである」 という定義とも深く通底しています。顧客の心の中にある「正解」にアクセスしようとする姿勢こそが、共通する本質です。
「点」の接点から「線」の伴走へ
ビジネスモデルの変化も、この二つの概念を結びつけています。かつては販売時点で関係が終わる「売り切り型」が主流でしたが、現在は継続的な利用を前提とした「ストック型」へとシフトしています。
デザイン思考では、「プロトタイプ(試作)→テスト→改善」というサイクルを回し続けるプロセスを重視します。一度リリースして終わりではなく、ユーザーの反応を見ながら常にアップデートし続ける姿勢です。これは、ブランド構築において調査・計画・実行・評価のサイクルを回し、時代に合わせてブランドを育てていくプロセスと同様です。
同様に、カスタマーサクセスも「契約」はスタートに過ぎません。導入から活用、そして成功へと導くための「伴走」が求められます。
共通するのは、「完成形はない」という前提に立ち、顧客の変化に合わせて自らも変化し続ける柔軟性です。2010年代にデザイン思考で「顧客視点」を学び、2020年代にカスタマーサクセスで「継続的な関係性」を実装する。日本のビジネスは今、そうした進化の過程にあると言えます。
ID INC.が大切にしている「課題解決」と「伴走」の視点
私たちID INC.では、この「デザイン思考」と「カスタマーサクセス」の視点を、日々のブランディング支援において非常に大切にしています。
多くのプロジェクトでは、「納品」がゴールになりがちです。しかし、ロゴやWebサイトを新しくするだけでは、本質的な課題解決にはなりません。私たちは、「デザイン思考」のアプローチで顧客が抱える本当の課題を見つけ出し、「カスタマーサクセス」の視点でそのブランドが長く愛され続けるための土台を作る。この両輪があって初めて、意味のあるブランド構築ができると考えています。
クライアント企業の皆様と向き合う際も、単に依頼された制作物を作るだけではありません。「このデザインは、御社の顧客にとって本当に使いやすい体験になっているか?」「数年後もこのブランド価値は続いているか?」といった視点を持ち、事業の成長を共に考えるパートナーでありたいと思っています。
表面的なデザインの美しさだけでなく、その奥にある「顧客の成功」までを設計すること。それが、結果として強いブランド基盤を作ることにつながります。
実践事例:思想を体験に落とし込むリブランディング
このアプローチを具現化した事例の一つが、カプセルホテル「安心お宿」のリブランディングプロジェクトです。
プロジェクトの課題は、「男性専用カプセルホテル」という既存イメージの刷新でした。私たちは利用者の行動や心理を深く掘り下げ、「ただ泊まる場所」ではなく「体験×情報」を提供する場へと再定義しました。
ロゴやキャッチコピーの刷新といった視覚的なデザインはもちろん、セルフチェックイン端末の使いやすさ(UI設計)から、エントランスに足を踏み入れた瞬間の内装デザインまでを一貫してプロデュース。これは、「顧客がホテルで過ごす全ての時間」において、ストレスのない快適な体験を提供するための取り組みでした。
結果として、認知度やリピート率の向上につながりましたが、これは単なる見た目の変更による成果ではありません。顧客にとっての「快適な滞在(サクセス)」を第一に考え、デザインと体験を丁寧に繋ぎ合わせた結果なのです。
これからのビジネスに必要な「愛される理由」
デザイン思考とカスタマーサクセス。言葉は違えど、その本質は「顧客への深い理解と、継続的な価値提供」に他なりません。
- 顧客が本当に望むものは何かを考え抜く
- 顧客が理想とする未来へ共に歩む
ID INC.はこの姿勢を大切にしているからこそ、クライアント企業の皆様とも「発注者と受注者」という関係を超え、事業成長を共にするチームであり続けたいと考えています。
もし、本質的なブランド構築と、顧客と共に成長するビジネスのあり方にご興味があれば、ぜひ私たちにご相談ください。

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